公開: 2021年4月25日
更新: 2021年5月25日
ヨーロッパ社会に大学が誕生したのは、11世紀のイタリアの都市、ボローニャである。大学は、ローマ教会からも、領主からも独立した、学位を授与する自治組織として生まれた。そこで、学問を教え、学位を認めるのは、大学から学位を授与された人々である。中世ヨーロッパの国々には、パリ大学、オクスフォード大学、ケンブリッジ大学、プラハ大学、ハイデルベルグ大学、ライプチヒ大学など、全部で七十数か所の総合大学が存在していた。学生は、全ヨーロッパの国々から集まり、どの大学で、どの教員から、何を学んでも、必要な教科の単位を取得すれば、どこかの大学から学位を授与された。講義は全て、ラテン語で行われていた。学位に、どのような単位が必要かは、全大学で統一されていた。
新大陸にできた米国の社会には、最初、大学は存在しなかったが、ハーバード大学が設立され、その後、数多くの大学が誕生した。米国の大学では、学部は当初、教養(リベラルアーツ)を主に教授するやり方を採用していたが、徐々に産業界の意向をくんで、専門分野の教育を行うようになっていった。
そのような状況から、米国社会では、専門職に従事する専門家を育成することが大学教育の主たる目的となった。そのために、大学には各専門別に標準カリキュラムが設定されるようになった。また、教育内容が適切に教授されていることを確認する認証制度としてアクレディテーション制度が導入された。
コンピュータ科学関連分野では、1968年から、標準カリキュラムの設定が教員を主体としするACMと、社会人技術者を主体としたIEEEの共同で開発された。また、IEEEの専門技術者を中心とした審査委員会が、大学教育のアクレディテーション認定を始めた。
米国社会では、アクレディテーション認定を受けた大学の学部学科を卒業することが、専門技術者として社会で働くための最低要件となっている。そのような学部学科の卒業生は、IEEEなどの専門職技術者団体に所属している。これは、日本の医学系学科の卒業生が医師になり、医学系学会に所属しているのと同じである。
大学とは何か、吉見俊哉、岩波新書、2011
カリキュラム標準コンピュータ科学、コンピュータ科学教育委員会報告書、情報処理学会、2008